アントネッロ@東京文化会館小ホール

北中正和さんのブログでも紹介されていた、『ヴェネツィアの霊感』と題されたアントネッロの演奏会を先週の金曜日に上野の東京文化会館で相棒の木村君と一緒に聞いてきたんでした。当日券で選んだ席は通路のすぐ後ろで、回りが空席だらけだったので、緊張することもなく楽しめてラッキーでした。

リコーダーやコルネットを吹く濱田芳通さんをリーダー格に、オルガンとハープとチェンバロを弾く西山まりえさん、ヴィオラ・ダ・ガンバの石川かおりさんの3人によるアンサンブルで、いずれもいわゆる古楽器。たとえばコルネットはただの管に穴を開けてマウスピースを付けただけの至極原始的なタイプのものだし、ハープもチェンバロもこの日のテーマに合わせて17世紀仕様のものだそうです。

音楽そのものははっきり言ってか〜なり地味で、メロディ・ラインを追っていても途中で意識がついていけなくなっちゃうくらいだったので、いきおい楽器の音色そのものを楽しむことになる。濱田さんの笛やコルネットは完璧にコントロールされていて、この手の音楽には素人の耳にも超絶的な技術の持ち主であることはわかるし、オルガンはまるで旧式のシンセみたいに太い電子的な音を出すし、それとは対照的にヴィオラ・ダ・ガンバ倍音成分たっぷりの心地よい低音を鳴らすしで、それぞれの楽器を堪能したところで休憩。

後半は即興演奏をまじえたプログラム。この即興パートが、各奏者が現代的な感覚を持っていることが聞き取れて、じつに面白かったのです。とくに西山さんのチェンバロのソロは、音程差の少ない音を選んで妙に平板なリズムを刻むもので、ちょっとミニマリズムみたいな、キュートなルックスに似合わない奇っ怪な演奏がおかしかった。

全部で3曲やったダリオ・カステッロという作曲家のソナタ第2番で本編を終えたあとのアンコールは、なんとピアソラの「オブリヴィオン(忘却)」。え、最後にいきなりそんな情緒たっぷりのメロディ? それまでの曲がかすんじゃうよ〜とおもわず心配になったんだけど(バロック以降のクラシックと比べたら、とにかくどれも渋かったんですよ、曲が)、このピアソラが見事でした。無理にタンゴのリズムにせず、たんたんと弾くヴィオラ・ダ・ガンバのベース部に乗せて吹く濱田さんのメロディがまた抑制が聞いてて、ほんとこの方、天才ですね。ただでさえ珍しい楽器の組み合わせによるピアソラ、ちょっと類のないすばらしい演奏でした。

そんなわけでずいぶん前から気になってた古楽アンサンブルの生演奏、訳が分からないながらもとっても楽しめたのでした。ちゃんとしたレビューはそのうち白石和良さんがブログに書いてくれるんじゃないかと勝手に期待。